母と子ども

幼児教育に関するつぶやき

とあるお蕎麦屋さんで出会った男の子3人持った若いママの話

 

蕎麦の花が一面咲き誇る栃木県。美味しいと聞いたお蕎麦屋さんでの事。注文して待っていると、隣のテーブルに可愛い4歳くらいの男の子が一番乗りでやってきて、テーブルの上の食塩を上手に手のひらに取りペロリ。びっくりして見ている私たちにニッコリあどけない笑顔を作るので、思わず吹き出してしまった。


日本では昔から「七つまでは神のうち」という言葉がある。
子どものやる事には全て意味がある。これはシュタイナー教育でもよく言われる事で、だから頭ごなしに叱らない、大人は子どもの目線でその子が何をしたかったのかを考えてから、或いはとっさに理解してあげて、穏やかに対応する事が大切ということ。


その後、歳の近いお兄ちゃん2人と若いママ、おばあちゃんと思われる大人と静かな女の子の6人が席に着き賑やかになった。
大ザルに盛られたお蕎麦と大籠に入った様々な野菜やキノコの天ぷらが運ばれると、ママが「はいっ、手出さない!分けてあげる!」とそれぞれにレンコンやゴボウ、キノコやお芋の天ぷらを分ける。3人の男の子たちは好き嫌いもせずよく食べる。
途中、「こぼさないの!」とか「食べる分だけ取りなさい」とか聞こえてくるが、本当に楽しそうに食べている。お腹が膨れてくるとさっきの塩舐め末っ子ちゃんがテーブルの下(お座敷でお座布団、足の短いテーブル)に寝転がりツルツルのテーブルの裏を触っている。私が思わずまた吹き出すと、ママが気づいて私の方に苦笑い。「ほんとにもぉーっ!すみません。朝から晩まで怒ってばっかりです。」と。
私は「いえいえ、可愛いですね。子どもはそういう事やりたいんですよ。うちの子もそうでしたよ。」と、〈気にしないで!叱らなくていい事だよ。〉という気持ちでそう言うと、「そう言ってもらえると、気持ちが楽になります。」とママ。

 

下の2人は食べ終わってきゃっきゃとじゃれ合っている。ママは「こらっ!もぉーやめなさい!」と言っているが、ケンカをしているのでもなく、お兄ちゃんは痛くないように加減をし、まさに可愛いじゃれ合い。子どもが終わるとママは残りの天ぷらやザルに残った短いお蕎麦をお兄ちゃんと綺麗に残さず食べている様子。
デザートやジュースをねだるでもなく、待ち時間をゲームするでもなく、取り分けてもらうのを待ち、好き嫌いせずに野菜をモリモリ食べ、小さいのに自分で箸を使って残さず食べ、食べなさい!とか言われず美味しく食べている。
賑やかだけど、しっかり躾されていて、あどけない子どもらしさをしっかり残して幸せそうなのだ。今ここには姿の見えないパパの存在もきっとステキなんだろうなぁと想像できる。

 

ここのお蕎麦はすごく美味しかった!勿論、こだわりの人気店で、蕎麦の旨さは素晴らしかったが、それにも増して、あの今どきのママの子育てと3人の子どもたちの清々しい可愛らしさが、心を満たしてくれた事が幸せだった。

私の目線から見ると、あの若いママは、本人は気づいていないが、とても子育てが上手い。そして愛情たっぷり。そして彼女自身がしっかりと子育てをされた幸せな女性だと思う。

 

今どきは子どもの叱り方が分からないママが多い。或いは間違った叱り方をしているのに、それで良し!と根拠のない自信を持っている。

 

「先生どうしましょう?」
「先生、助けて下さい。」
「この事で悩んでいます。こんな時どうすれば良いですか?」
など、度々相談してきて、「そんな事もわからないのか…」と内心思いながらもアドバイスすると、素直に直そうと努力するママはまだいい!そんなママと子どもたちは、どんどん良くなるし、見守るこちらも、その母子を可愛いと思い、何とか良い子育てをする為の方法を惜しげもなく教える事ができる。


しかし、
人として未熟な女性が母になってしまった恐ろしさを感じさせる姿に出くわす事が多い今どきは、なかなか「いいなぁ」と思う子育てをしてるママには出会えない。

 

子どもを育てる事は難しい。マニュアル通りにはいかないし、初めての子育てについつい熱くなり「叱る」ではなく「怒って」しまったり、心配のあまり口うるさくしてしまったり、善悪の判断を誤ったり、誉める時に代償を与えてしまったり…。


「怒る」という行為は、怒りの感情が入っている為に、何がいけなかったのか?が子どもに伝わらない。怒る事と厳しさとは全く違うし、優しさと甘やかしも全く違う。
口うるさく怒ってばかりのママの子どもは、何がいけなかったかが届かず、口うるさいママの言葉を右から左へ聞き流す事を覚える。ここで切り分けたいのは、口うるささは果たして、本当に言う必要のある事だったのか?という事。叱る必要のない事を何度も何度も繰り返し言うのはかえって逆効果、本当にいけない事を1度で良いからしっかり伝えるべきだ。

 

悪い事も見逃して甘やかして、お菓子を買い与えて言う事を聞かせれば、我慢のできない子どもになる。そして代償がなければやらないという、取り引きでないと動かない、心の冷たい子どもになる。

 

あとは、子どもを叱らないママも増えている。自由奔放に、子どもを尊重しています!と、悪い事をしても叱らない方針を、心の広い、美しく尊い姿だなどと錯覚しないでほしい。


子どもは何でも試してみて体験を通して学んでいく。良い事も悪い事もやってみて、ママに褒められたから次もやりたい、叱られたからもうやっちゃいけないと判断する。やってみて納得ができればそれがその子の価値観になって積み重ねていく。
だから悪い事をしたら、しっかり叱って、何故いけなかったかを説明する必要がある。


叱るレベルはいろいろあるよね。
「こらっ!」で終わる笑いを伴うものから、即座にやめさせる必要のある危険な事まで。どのくらいのレベルなのかを、ママの表情や声の感じで測ってる子どもたちは、そのレベルを学んでいく。だから、ママは子どもが分かりやすい叱り方をすると良い。常に怒っていたら、そのレベルはわからない。本当に悪い事、人に迷惑をかけていたり、危険を伴う事は緊急性を持って叱り、あとはなるべく体験させて一緒に反省して次に繋げるようにすれば良い。
本当の「叱らない子育て」はこういう事だと思う。


叱る事をせず甘やかして育てれば、子どもが本来持っている頑張る力を潰すどころか、自分勝手でワガママで、人に厳しく自分に甘い、困った大人になる事は容易に想像できる。

 

長くなってしまったが、
「幸せな子ども」は表情でわかる。
善悪の判断がわかり、愛されているからこその自信がある。そして子どもらしい笑顔の中に、堂々とした存在感がある。食べ物もすごく関係がある。食べたもので私たちの身体はできているのだから。
正しい子育てをされ、正しいものを食べ、たっぷり愛された子ども。それが本当の意味での「幸せな子ども」だと思う。

沢山の子どもたちが幸せであることを、心から願ってやまない。